MIYAKE ISSEY展 三宅一生の仕事

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CREEn°375, April/May 2016

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三宅一生
躍動する服

三宅一生インタビュー
聞き手:Lionel Blaisse(リオネル・ブレース)

活動を開始して45年余、日本のデザイナー・三宅一生は一貫して身体をあらゆる束縛から解き放つ服づくりを行ってきた。彼が「デザインプロダクトとしての服づくり」と呼ぶその仕事は、手技と科学技術の独創的な融合だ。

Lionel Blaisse:まずは、45年余にわたって続けられてこられたあなたの「仕事」あるいは「活動」の中核にあるものについてお話いただけますか。

三宅一生:それは「ものづくり」です。そしてそのために非常に重要な役割を果たしているのが「手技」です。

Lionel Blaisse:あなたの思考ならびに作品の中心には常に、身体へのアプローチが認められますね。

三宅一生:身体はすべての服づくりの出発点にあるものですが、私にとって常に最も重要であり続けてきたのは、身体と服のあいだにある間(ま)の研究です。

Lionel Blaisse:あなたは広島で生まれ育ちましたが、そのことはあなたのお仕事に何らかの影響を及ぼしていますか?

三宅一生:広島に架かる平和大橋の欄干はイサム・ノグチによってデザインされたものですが、このノグチ作品が私の前に新しい世界を切り開いてくれました。「これこそがデザインというものなのだ」——そう悟ったことがすべての始まりでした。ですから私は「モード」や「ファション」をつくりたいと思ったことは一度もありません。当初より、普遍的な服の創造を目指していました。

Lionel Blaisse:パリで研鑽を積んだ時期がありましたね。パリでの日々はその後のあなたの仕事にどのような影響を及ぼしましたか?

三宅一生:パリ滞在中の1968年、私は五月革命に遭遇しました。若さ、自由、そして因習打破の精神が漲る人々の行動に私は驚嘆し、深く感銘を受けました。まさに彼らの姿を見て、誰もが心地よく着られる、日常生活のための服をつくろうと決心しました。

Lionel Blaisse:あなたの仕事と建築の関係についてお話をうかがえますか。

三宅一生:建築には昔から深い関心を寄せています。私の仕事はしばしば建築との相互関係を指摘されますが、私自身が考える服と建築の共通点は、どちらもユーザーによって初めて生を与えられる点にあると考えています。つまり、服は人に着られて初めて生を得るものであり、一方の建築も、人がそこで生活したり仕事をしたりすることによって初めて生を得るものであるというのが私の考えです。

Lionel Blaisse:つまり、服は身体のための建築物、すなわち身体の住まいであるということですね。

三宅一生:当初より私が一貫して目指してきたのは、普遍的な服をつくることです。つまり、性別も年齢も体型も問わない、誰もが着られ、誰もが似合う服をつくることです。

Lionel Blaisse:かつてあなたは、振付師ウィリアム・フォーサイスとフランクフルト・バレエ団のためにコスチュームをデザインしましたね。

三宅一生:自由の精神に溢れるフォーサイスの仕事からは常に大きな刺激を受けています。

Lionel Blaisse:あなたの創造プロセスのなかで特に重要な段階はどこですか? また、あなたの服づくりにおける身体観は技術革新に伴い変化しましたか?

三宅一生:建築家フランク・ゲーリーの「I have an idea!(閃いた!)」という言葉をここで引き合いに出したいと思います。ものづくりというのはそれが何であれ、すべてはちょっとした閃きから始まるものなのです。創造プロセスの各段階に優劣はありません。どの段階も重要で、あらたな発見や成長をもたらしてくれます。これは私のチームに常々言っていることですが、ものづくりの現場においても個人の実生活においても重要なのは好奇心です。我々のチームが目指しているのは、伝統的な手技と最新技術を融合させることによって、伝統遺産を継承しつつ、未来のためのソリューションを開発することです。我々はその研究に日々打ち込んでいます。

Lionel Blaisse:色彩はあなたの服においてどのような役割を果たしていますか?

三宅一生:色彩は喜びや活力を与える役割を果たします。アーティストでデザイナーの田中一光や横尾忠則の色づかいはまさに傑出しており、いつも感服させられます。

Lionel Blaisse:あなたはこれまで、さまざまなアーティストと数々のコラボレーションを行ってきましたが、コラボレーションを行う理由は何ですか?

三宅一生:私は好奇心が旺盛で、いろいろなことに取り組みたいのです。大好きな人や尊敬している人たちと力を合わせてひとつのことを成し遂げるというのは、新しい発想を育む貴重な機会であると思っています。

Lionel Blaisse:話を身体に戻しましょう。性別の問題についてはどうお考えですか?

三宅一生:男性のための服づくりと女性のための服づくりは非常に異なる仕事ですが、しかし男性も女性も求めているのは同じ、すなわち動きやすく、機能的で、なおかつ美しい服ではないでしょうか。また、ライフスタイルに関しても男女間でそれほど大きな差は無いと感じています。

Lionel Blaisse:あなたの創造活動のモチベーション(動機)は何ですか?

三宅一生:新しい発想で新しいものづくりの方法を生み出したいという思いです。この思いは今も昔も変わりません。

Lionel Blaisse:創造、研究、美学、そしてヨーロッパ。この4つの言葉からあなたが思い浮かべるものを教えてください。

三宅一生:創造、研究、美学の3語は私が仕事において重視している言葉と言えるでしょう。ともあれ私が心血を注いでいるのは、未来につながる普遍的なビジョンを描き、それを世に提案し続けることです。