MIYAKE ISSEY展 三宅一生の仕事

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Harper's BAZAARMarch 2016

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(1ページの写真の説明) 『ストライプ・カラー・ガード』 1996年秋冬コレクションから
ナイロン製シャツとパンツのアンサンブル
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(2ページ中央、オリジナルバッグの写真下テキスト) コレクションの対象
タッシェン社の新刊『ISSEY MIYAKE 三宅一生』のコレクターズエディションは、1000部限定発売。再生繊維を使った132 5. ISSEY MIYAKEの2010年コレクションの「No.1ドレス」を模した、三宅一生デザインのオリジナルバッグ付き。

(2ページのモデル2人を撮影した写真下テキスト) 『バンブー・プリーツ』 1989年秋冬コレクションをまとうモデルたち

現在の身体から

タッシェン社より充実した内容の新刊書籍発売、さらに東京の国立新美術館で開催の大展覧会で、流行ではなく普遍的な衣服を選んだデザイナー三宅一生の才能を称える。

文・ラファ・ロドリゲス

「自分の過去によって定義されたくなかった」。未来に視線を向け、現在を身にまとうことに何よりも気を配ってきたこのデザイナーが好んで口にするこの言葉は、少なくともこの3ヶ月間、むなしく響くだろう。なぜなら長年―実に約半世紀―にわたり、自分たちが生きるその時代に合った衣服づくりの研究開発に専念してきた歳月が遂に、美術館の歴史の一ページとなるのだ。とりわけ存命中の誰かの人生を回想し賛辞するというのは、まだ今日という日が終わらないうちに昨日を祝おうとすることに等しい。78歳の誕生日(4月22日)を目前にひかえ、三宅一生は、自らそれを手に入れたようだ。つまり、国立新美術館がこれを展示したのである。
「前代未聞のイベント」と紹介される『MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事』は、1970年にブランドおよびデザイン事務所を立ち上げて以来、長年第一線で活躍するモードの“長距離ランナー”三宅一生氏の足跡をようやく辿ることのできる大展覧会となる。広島出身で先見の明があるこのデザイナーが、このような公共施設で紹介されたり、その作品が展示の対象となったりするのは初めてのことではない。しかし、これまでは、例えば1998年パリのカルティエ現代美術財団で開催された極めて現代的な『Issey Miyake Making Things』のように、どれもその時代のプロジェクトを展示したものばかりであった。「実のところ、この展覧会開催について特別な理由はないのです。7年前、国立新美術館からアーカイブ作品で展覧会を企画するお話をいただきましたが、コレクションが膨大な量のため、私たちとしては不安をたくさん抱えていました。コレクションを整理し服を厳選した上、どのように展覧会を構成するのか決定するまでに、かなりの時間がかかりました。」とHARPER’S BAZAAR誌に語るのは、三宅デザイン事務所代表取締役社長で今回の展示ディレクター兼プロデューサー、そして40年余り前からこのクリエーターの右腕でもある北村みどり氏だ。
表舞台に立つことが少なくなったものの(ただし、引退ではない。自社の繊維やテクノロジーの実験ラボラトリーであるReality Lab.で若手デザイナーやエンジニアの作業を監督し、デザインに特化した私設機関である21_21 DESIGN SIGHTの展示プログラムの監修を今でも続けている)、この日本の巨匠が、展覧会の総合ディレクションおよび展示構成を担当した。なお、空間デザインでは、グラフィックデザイナーの佐藤卓とアーティストの吉岡徳仁がコラボレートしている。「私の使命は、三宅の希望を解釈し、詳細を具体化することでした。」と北村氏は認める。「三宅一生の興味関心は、ファッションではなく、衣服というプロダクトの創造なのだということを、本展を訪れた人々に理解してもらうことが今回の展覧会の意図です。彼にとって、この展覧会で一番重要な点は、デザインをするプロセスがこんなにも楽しくて面白い、ということを次世代に伝えることだと思います。」
『MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事』の開催と同時期に、このデザイナーに捧げられた新刊書籍『ISSEY MIYAKE 三宅一生』が発売となる。内容が非常に充実したこの新刊は、北村みどり氏自身が総指揮を取り、ドイツの出版社タッシェンから出版される。展覧会と同様、三宅氏のこれまでの作品を辿りながら、編集者で大学教授の小池一子氏による年代順の解説とともに、プロジェクト『Pleats Please Travel Through The Planet』以来ビジュアルコラボレーターとして緊密な関係を築く高木由利子の写真が掲載され、三宅氏への敬意が表わされている。「三宅の大きな挑戦とは、シンプルでプレーンな衣服をデザインすること、すなわちジーンズやTシャツのように日常生活で着られる服をデザインすること。」北村氏はこう締めくくる。「三宅一生は、ファッションではなく、良いものづくりをしたいと思っています。結局のところ歴史を作るのは、それらのプロダクトを身に着ける人たちの日常生活に与えるインパクトなのです。」

『MIYAKE ISSEY展: 三宅一生の仕事』国立新美術館にて2016年3月16日から6月13日まで開催(2016.miyakeissey.org。モノグラフ『ISSEY MIYAKE三宅一生』は出版社タッシェンから発売中。